年間予定上で決まった保護者面談としては開校後初めて。
保護者の皆様にご足労いただき、教室での指導の様子とご家庭での様子の情報交換、今後の指導方針、夏期講習のご案内をさせていただいております。
私自身、個別指導塾で仕事をして既に15年。
いろんな方といろんな場面で保護者面談をさせていただいてきました。
もちろん他塾から転塾してきた方、他塾で勤務経験のあるスタッフなどと接する機会も多かったため、他の塾では面談の様子がどんな感じなのかも知る機会が多くありました。
今日は私自身の経験も含め、「これはどうだろう…」と思う面談についてお話ししたいと思います。
まず一つ目の例です。
大規模な個別指導塾によくある会話の例として、こんなのがあります。
担当者「○○君、よく頑張ってますよー!」
保護者「本当ですか??」
これ、本当でない場合もあります。
と言うのは、面談担当者(大体の場合教室責任者)が、その生徒のことをよく分かっていない場合も少なからずあるのです。
成績は書類で把握、授業の様子は時々見に行くけれど真面目にはやっているよう、でも実はあまりよく知らない、って程度の知識です。
私自身の過去の経験ですが、生徒が200名を超える個別指導塾の管理をしていたことがあります。
授業のブースだけで30以上、講師も30名以上です。
こんな場合、すべての生徒について授業の様子を面談の場で細かく報告したり、生徒自身がこんなことを言っていたなんて情報を提供したりとかはかなり難しいです。
当然結果として表面上の話になってしまいます。
「前回のテストの結果はこうです。ご覧の通り数学が弱いですね」みたいな。
いや、それはテスト結果を見れば分かりますよね、って程度の話になってしまいがちです。
「授業の様子はどうですか?」
「大丈夫ですよ。しっかり取り組んでいます」
みたいに、授業の報告ともなると細かいことまで把握できていないため当たり障りのない対応になってしまいがちなわけです。
二つ目の例を挙げます。
保護者「うちの息子、きちんとやっていますか?」
担当者「ええ。問題ないですよ」
こんな感じで当たり障りのない話に終始した場合、何かある場合がなきにしもあらずです。
褒めることができる材料については当然塾側にしても報告するのが嬉しいわけです。
「最近目つきが変わってきました」「学校の授業が分かるようになってきて嬉しいって話していました」
こういう話題を話さない担当者はいません。
でもね、ネガティブな報告材料と言うのは話しにくいわけです。
「授業中の様子がこういう点でまだまだです」「学習意欲がまだ不十分です」
こういったことは言い辛いんです。
でも保護者様の立場で言うと、ダメな点ほど教えてほしいって思いますよね。
もちろん同時に「だから塾に通わせているんでしょ」という思いもあるでしょう。
だから塾側は「こういうところがまだまだですので、こちらではこういう指導をしています。簡単に成果が出るものではありませんので、こちらとしては引き続き根気よくこの指導方針で進めていくつもりです」と言う風に、現状で不十分な点・現在の指導状況・今後の指導方針をあわせてお伝えしなければなりません。
そういうビジョンがないと、「この点が不十分です」と指摘がし辛いわけです。
これって「風邪ですね」って診断をしながら、薬も出さず予防法も教えていない医者みたいなもんです。
風邪かどうかを聞きに来たんじゃなく、この具合の悪さを何とかしてほしいと思って病院に来ているわけですよね。
学習塾においても同じです。
「こういう点が不十分ですね」って報告しても、それが性格的なものやこれまでの学習の仕方の『癖』から来るものだとしたら、面談担当者よりも保護者のほうがよくご存知だということも往々にしてあります。
「集中力が持続しませんね」
「今まで散々言われてきています」
みたいなやり取りだけで、保護者の方が得るものは何かあるでしょうか。
「だから指導上でどういう風に改善をはかってくれているの?」って思うだけでしょう。
保護者面談って、そういうビジョンをあらためて保護者の方に伝える場ではないかと思っています。
それが十分に伝えられるだけの指導ができていない場合、どうしてもネガティブな報告材料はオブラートに包んで話を進めてしまう。
そういう面談では有意義とは言えませんよね。
最後にもうひとつ。
保護者「うちの息子、きちんとやっていますか?」
担当者「ええ。問題ないですよ」
上記同様、こんな当たり障りのない受け答えの場合、もしかしたら先生が生徒に遠慮しているのかもしれません。
気弱な先生の場合、生徒が「先生お母さんに余計なこと言わないでよ!」って言うもので、生徒との関係を険悪にしたくないためか何かはわかりませんが、生徒に遠慮してしまうのです。
まず面談で報告すべきことに「余計なこと」はありません。
生徒が「先生のせいで家でお母さんに怒られたじゃん!」って言っても、「それは先生のせいじゃなくあなた自身のせいでしょ?」ってことです。
なのに遠慮して本当のことが報告できない。
生徒の顔色を伺うと言うか、ごまをすると言うか。
もしかしたらへそを曲げて塾を辞めちゃったらどうしようなんてことまで考えるのかもしれません。
そういう頼りない先生もいないわけではないんです。
以前私の部下からこんな相談を受けたことがあります。
「生徒を叱れないんです。と言うより、叱り方がわからないんです」
叱る必要性がない状況だったらかまいませんが、年間を通して一度も叱る必要性がなかったなんてことは絶対にありません。
その部下も「叱らなければ」という場面に遭遇し、でも叱れなかったから相談してきたんでしょう。
『叱らなければという思い』より『生徒への遠慮』が勝ってしまっているわけです。
ダメな時には叱ることこそ愛情です。
もしかしたらその瞬間は生徒が不満を示すことがあるかもしれません。
でもそれに遠慮しているということは本当の意味でその子のことを大事に思っていない証拠です。
先生が生徒に遠慮しているような環境の塾か、規律ある環境の塾かは、生徒がいる時間帯に行ってみればすぐに感じ取れると思います。
以上、ダメな面談例をいくつか挙げていきました。
プレストでは、できていないことはできていないとストレートに報告しています。
オリジナルの通知表を作り、担当講師が自身の主観での評価(5段階)とコメントを書くわけですが、本当に到達状況がよくなければ遠慮することなく『1』とつけさせています。
で、だから現在どうしているか、これからどうするかをきちんと報告しています。
できる限り課題を明確にしてそれを共有するような場にしているつもりです。
本当は夏期講習のことについても触れたかったのですが、すでに結構長いので次回に回します。
個別指導の場合、講習の授業はオーダーメイドで、受講する科目や時間数などはすべて相談の上で決めるような形式の塾が多いと思います。
その場合、講習の受講詳細を決める上で塾側の提案を踏まえて検討される場合がほとんどでしょう。
その『塾からの提案』というところに焦点を当てて述べてみるつもりです。
その提案は妥当かどうか、ってことを考えてもらう助けになればと思っています。
とりあえず今回はこれにて。
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